Tom Nelligan著
超音波非破壊検査(NDT)は、幅広い物質解析に応用できます。超音波NDTは厚さ測定、探傷検査、音響の画像化が最も広く知られていますが、固体や液体の基本となる機械的特性、構造特性または組成特性の識別や定量化にも高周波音波が使用されます。超音波物質解析では、波動運動というものは媒質の影響を受けて通過するという単純な物理法則に基づいて行われます。そのため物質への高周波音波の伝播は、伝送時間、減衰、散乱、周波数成分という4つのパラメータで簡単に測定できますが、これらは硬度、弾性率、密度、均質性、粒状組織など、物理的特性に応じて変化します。
基本原理:超音波非破壊検査(NDT)は、約20KHz
~100MHzを超える範囲の周波数が使用されますが、500kHz~20MHzが最もよく使用されます。一般的に振動は、縦波と横波で表されますが、特殊な場合は表面波やラム波も使用されます。波長が短いと通過する媒質の変化に対する感度も高くなり、物質解析では多くの場合、試料に適用できる最高レベルの周波数が使用されます。音波パルスは通常、圧電型のトランスデューサ(探触子)によって発生し、試料に音響として伝達され、再びトランスデューサに戻ります。多くの場合、試料の片面に使用するトランスデューサは、1個で送信と受信パルス
/ エコー測定法として機能します。ただし、減衰や散乱の激しい物質では、試料の反対側に送信用と受信用のトランスデューサを用意する場合もあります(透過測定モード)。音波は、スパイク状の電圧または継続的な波動インパルスのいずれかで、トランスデューサを励起することにより射出されます。音波が試料に伝搬すると、底面に反射して元の位置に戻るか(パルス /
エコー測定法)、またはその地点で他のトランスデューサに受信されます(透過測定モード)。受信した信号は、増幅され解析されます。アナログ信号やデジタル信号の処理を活用したさまざまな測定器が用意されています。
超音波検査が他の物質解析の手法よりも優れている点は、オンラインやインプロセス測定が実施できることです。カップリング液として水槽や水流を使用することにより、直接接触しなくても高周波音波は、動きのある物質内に伝播されます。また、音響エネルギーを送信することによって密閉した容器内の測定も可能です。音波が試料内を通過するため、物質の表面的な測定ではなく、材質特性を測定することができます。高性能のゲートを使用することにより、多層素材の1つの層だけを解析することも可能です。
1. 音速 / パルスの伝送時間:音速は、超音波測定のパラメータとしては最も単純です。均質な媒質における音速は、弾性率と密度の両方に直接関係します。そのため弾性率と密度のいずれかが変わると、一定の厚みを通過するパルス伝送時間に影響します。また、不均質性の度合いによっても音速は変化します。
2. 減衰:音響エネルギーは、異なる物質の場合に相互の密度、硬度、粘度および分子構造の複合作用によって複雑化され、異なる割合で吸収、減衰が起こります。減衰は通常、物質の中の周波数に合わせて増加します。
3. 散乱:音波は、異なる物質の間の境界で反射します。粒状組織、繊維の配向、間隙、粒子濃度およびその他の微細構造の変化によって、散乱した信号の振幅、方向、振動数成分が影響を受けます。散乱の影響は、底面エコーや透過法の信号の振幅変化で間接的に監視することができます。
4. 周波数成分:すべての物質は、程度の差はあるもののローパスフィルタの役割をして、低周波成分よりも広帯域の音波の高周波成分を減衰、または散乱させます。そのため選択した広帯域パルスが試料に伝搬した後、残りの振動数成分の変化を解析すると、上記の減衰と散乱を組み合わせた場合の効果を追跡することができます。
用途によっては、速度などの超音波データを直接使用して弾性率などの特性が計算できます。また、超音波試験は比較手法を応用しているため場合によっては、特定の用途における試験プロトコルを設定するために定量化の対象となる物質の条件範囲を示す基準ゲージを評価する必要があります。このようなゲージを使用すれば、特定の物質特性が変化することによって音響伝送パラメータがどのように変化するかを記録し、その基本情報を使用して試料における同様の変化を識別し、予測することができます。
装置:物質の解析には、さまざまな超音波計測器が使用されます。音速は、シンプルな携帯用超音波厚さ計を用いて測定できます。また、最新のデジタル式探傷検査器では速度、減衰、散乱の影響も観察できます。さらに、適切な付属装置を備えたパルサーレシーバと適切なソフトウエアをインストールした超音波画像システムでは、このような特性の定量化に使用できるほか、スペクトル解析(周波数成分)の試験も行うことができます。これら2つの測定器の使用や検査別トランスデューサの推奨事項については、当社までお問い合わせください。
用途:次に紹介するのは、実際に使用され報告された超音波技法例の概要です。詳細および参考文献は、「ANST1」および「Lynnworth2」のテキストを参照してください。検査手順と装置の要件に関する詳細については、これら2冊を参照されることをお勧めします。
弾性率:均質かつ均一の物質におけるヤング率と剛性率は、物質の密度とともに縦波と横波の速度から計算できます。導波体を使用すると高温での測定も可能になります。
鋳鉄の球状化形成:鋳鉄のグラファイトの結晶とその形状およびフォームは音速測定で定量化できます。
エポキシ樹脂とコンクリートの硬化速度:これらの物質が硬化すると音速も変化します。そのため硬化の程度に関連付けて、音速を測定します。コンクリートの検査では通常、透過法の入射のために両側に接触させる必要があります。
液体濃度:音速の異なる2種類の液体の混合率は、一定の温度における溶液の音速に関係します。
スラリー密度:特定の温度におけるボーリング泥水およびパルプスラリーなど、スラリーの液体 / 固体の混合率は、音速および / または音の減衰に関連付けることができます。
セラミック密度:焼成前後のセラミックの密度の均一性は、音速測定で検証できます。
食品:卵やじゃがいもの鮮度、果物の成熟度、牛肉の脂肪量、牛乳の固形物の割合など、さまざまな検査が報告されています。一般的にこれらのテストは、非破壊の状態で行われ、汚染の心配もありません。
プラスチックのポリメリゼーション:プラスチックをはじめポリマーでは、ポリマー鎖の長さや配向などの分子構造の変化によって、音速および / または音の減衰が異なります。
粒子や間隙のサイズと分布:固体媒質や液体媒質の粒子や間隙のサイズや分布は散乱した超音波の振幅や周波数に影響します。
金属粒子のサイズ:鋼鉄、鋳鉄、チタニウムなど金属における粒子のサイズや配向によっては、散乱した超音波の振幅、方向および / または周波数成分が変化します。
固体の異方性:固体の異なる軸に対する音速、散乱および / または減衰の変化は、異方性の識別および定量化に使用されます。
鋼鉄の表面硬化深さ:高周波の横波による後方反乱測定は、表面硬化の深さを測定する場合に使用します。
温度の測定:超音波温度計測は、参照媒体の音速変化をモニタして高温(3,000°C以上)を測定する場合に使用します。
参考資料:
1)『Nondestructive Testing Handbook, Volume 7, Ultrasonic Testing 』(米国非破壊試験協会著、1991年ASNT発刊)
2)『Ultrasonic Measurements for Process Control 』(Lynnworth, Lawrence C.著)