接触媒質
超音波測定では、接触媒質用にさまざまな材料が使用されます。プロピレングリコールは、多くの用途に利用されています。音響エネルギーを最大限に伝達する複雑な用途には、グリセリンがよく使われます。ただし、金属の一部ではグリセリンによって水分が吸収されるため腐食する可能性があり、このような場合は推奨できません。その他、常温での測定に適した接触媒質には、水、油やグリース、ジェル、シリコン溶液などがあります。
表面が滑らかな場合、用途によっては液体の接触媒質の代わりに薄い柔軟な薄膜(薄いポリウレタンなど)をトランスデューサの面、または遅延材と試料の間に使用します。この方法の場合、測定器の設定パラメータの変更が必要になることがあります。また、トランスデューサを試料の表面に強く押し付けなければなりません。上記で説明したように、測定時の温度が高い場合は、高温用の特別仕様の接触媒質が必要になります。
高温での測定
高温での測定(約50°C / 125°F以上)は、特別な注意が必要になることをあらかじめご理解ください。はじめに、標準のコンタクトタイプ・トランスデューサは、この限界以上の高温にさらされると、破損するということを念頭に置き、十分注意してください。トランスデューサに使用されている材料の熱膨張係数が、高温によって変化し、剥離してしまいます。コンタクトタイプ・トランスデューサは、指で触れられないほどの高温の表面には、決して使用してはなりません。
また、高温での測定は、通常モード2またはモード3で遅延材タイプ・トランスデューサ(適切な高温用遅延材を使用)、または水浸トランスデューサを使用して行います。すべての物質の音速は、温度によって変化します。通常は、物質の温度が低下すると音速が上昇し、物質の温度が上昇すると音速は低下します。また、物質の温度が凍結点や溶解点に近づくと急激に変化します。金属やセラミックよりもプラスチックやゴムの方が、変化は大きくなります。音速の変化は、弾性率や密度の変化と関係し、物質と温度の範囲によって、この関係は非直線化(複雑化)します。最大限の精度を確保するため、測定器の音速の設定は、測定時と同じ温度で校正します。高温物質の測定では、測定器を室温に設定すると、音速によって重大なエラーを発生させてしまいます。また、約100°C
/ 200°Fを超える温度では、高温用の特殊な接触媒質の使用を推奨しています。現在、さまざまな市販製品が入手可能です。
オンライン測定
連続したオンライン超音波厚さ測定は、ほとんどの工業製品に適用でき、一定のプロセス監視に応用されていますが、特に押出し成型プラスチックや金属板、金属管などに適しています。通常、バブラーや噴出装置で生成した水柱、または水槽を使用して音響エネルギーを試料に入射します。測定は、モード2または3で行われますが、特殊な場合はコンタクトタイプ・トランスデューサを使用して、モード1で行われます。オンライン超音波測定の精度を確保するには、物質の温度を安定させることが大切です。これにより、音速の変化によるエラーを防止することができます。入射の一貫性を維持するためには、表面を十分に滑らかにする必要があります。また、トランスデューサと試料の正確な配置を確保するためには、ある種の固定材(治具)を使うことも必要です。
ケーブル長
水中での検査など特殊な用途では、長いケーブルを使ってトランスデューサと超音波測定器を接続する必要があります。これらは腐食測定が主となり、本書の目的からはずれますが、精密測定でも長いケーブルが必要な場合があります。測定に大きく影響するケーブルの長さは、用途によって異なりますが、精度や最小測定範囲などの条件と同様にトランスデューサの周波数によって異なります。20MHzで1メートル /
3フィートを超える長さでは、ケーブル反射が波形に影響を及ぼします。低い周波数では、長いケーブルの場合より特別な配慮をせずに使用できます。ただし、ケーブルの長さが特に3メートルを超える場合は、固有の用途条件と照らし合わせて実験評価をする必要があります。モード1の測定では、ケーブル反射によって励起パルスの波長が伸び、測定可能な厚さの最小値が制限されます。また、ゼロオフセットでケーブルを通過してくる電気パルスの伝搬時間を補正する必要もあります。モード2および3では、ケーブル反射によってインターフェースエコーと底面エコーに歪みが発生し、極端な場合(約30メートル
/ 100フィート以上のケーブル)は、ケーブル内の電気の伝播時間に等しい間隔で必要な信号の後にスプリアス(不要波)信号が、大量に伝送される場合もあります。
測定モードに関する注意 モード1:最初に反射されるエコーの励起パルス
コンタクトタイプ・トランスデューサを使用した超音波厚さ測定は、最もシンプルな手法としてさまざまな用途で利用されています。ほとんどの工業用材料では、コンタクトタイプの手法を使用すると、トランスデューサから試料までの超音波の入射効率が最も高くなります。用途条件に制限がある場合は、コンタクトタイプ・トランスデューサを使用してモード1で測定することが推奨されています。
図3で示すようにコンタクトタイプの測定は、一般的に厚さの最小値が金属で約0.5ミリ(0.020インチ)、プラスチックで0.125ミリ(0.005インチ)を下回らない場合で、かつ精度条件が0.025ミリ(または±0.001インチ)を上回らない場合に適用します。また、前述のように試料温度が約50℃を超える場合は、コンタクトタイプ・トランスデューサは使用できません。高温では、トランスデューサが熱により破損する可能性があるためです。
この測定モードでは、励起パルスから最初のエコーが反射されるまでの時間に、トランスデューサのウェアプレートとカップリング液へのパルス伝播時間、ケーブル遅延および立ち上り時間によるオフセット、または検出されたエコーの周波数成分による多少の増分が含まれます。このような要素を補正するため、測定器にはゼロオフセット機能が装備されています。それによって、測定時間合計からこれら数種類の固定された遅延合計に相当する時間が、減算されます。ゼロオフセットは通常、トランスデューサの周波数を変更すると必ず調整が必要になります。これは、厚さや音速の既存値を使用した基準試験片で行いますが、音速が不明な場合は、2種類の厚さの基準試験片を使用して速度とゼロオフセット値を設定します。
試料の音響特性や試料厚さ、形状など多くの要素を考慮して適切なコンタクトタイプ・トランスデューサを選択します。一般的に周波数が高く直径の小さいトランスデューサは、信頼性と再現性に優れ、測定対象の厚さ範囲で十分なパフォーマンスが得られます。小径トランスデューサは、試料への接触が簡単であり、同じ荷重で最も薄い接触媒質の層に入射できます。また、高周波トランスデューサは、立ち上り時間の短い信号が作れるため、厚さ測定の精度も向上します。その一方で、音響特性や試料の表面状態によっては、適当な入射および散乱や減衰の問題を解決するため、トランスデューサを低周波にする必要があります。
コンタクトタイプで曲面の厚さを測定する場合は、トランスデューサの振動子サイズは曲率半径の減少に合わせて小さくします。また、トランスデューサと試料の表面の間に使用する接触媒質の量も最小限に抑えます。接触媒質を過剰に使用すると、トランスデューサと曲面の間の接触媒質に音響エネルギーが反射するため、ノイズが発生します。
モード2:最初の底面エコーに対するインターフェースエコー
励起パルスに続く最初の2つのエコー間の測定は、モード2に分類されるためモード2を使用します。通常、この場合は、遅延材やウォーターパスと試料の外側表面の間にある境界のインターフェースエコーから内側表面の底面エコーまでを測定します。
モード2で測定する場合に必要とされるインターフェースと底面からの2つの有効なエコーについては、考慮すべき条件がいくつかあります。まず、インターフェースエコーが、確実に存在する必要があります。柔らかいプラスチックやシリコンなど、水と同様に音響インピーダンスの低い物質を、水浸型で測定する場合があります。また、遅延材タイプ・トランスデューサで遅延材とほぼ同じインピーダンスを持つ物質(ポリマーなど)を測定する場合もあります。このように水または遅延材と試料のインピーダンスが同じ場合は、インターフェースエコーが減少して振幅が低下するため、検出の信頼性が損なわれる可能性があります。遅延材タイプ・トランスデューサでの測定が困難でも、異なる遅延材を使用することによって修正できる場合がありますが、水浸型の測定で問題がある場合は、水浸型の接触媒質として水ほど効果的な液体は存在しないため、解決は難しくなります。(特殊な例として高温の押出し成型プラスチックとインピーダンスが一致する場合は、冷却管のプラスチックが冷えている地点までトランスデューサを移動すると音響インピーダンスが増加します。)
また、インターフェースエコーと底面エコーの両方の位相、または極性をモニタして装置の検出用極性やゼロオフセットを調整し、反転を補正する必要もあります。最も一般的な例では、プラスチックと金属の両方を試料とした遅延材型での測定が挙げられます。プラスチックの遅延材を金属試料に使用すると、高いインピーダンスから低いインピーダンスの境界ができ、同じ遅延材をポリマー試料に使用すると、相対的音響インピーダンスは、高いインピーダンスから低いインピーダンスの関係になります。インターフェースエコーの極性は、これら2つの状況では反転し、測定器が正しく調整されないと測定でエラーが発生します。これは遅延材タイプ・トランスデューサでの測定で、ゲージを金属の基準ブロックに設定してからプラスチックの測定に使用した場合に発生します。インターフェースエコーと底面エコーの位相は、水浸型で曲面の測定を設定する場合でも、ビームの形状と曲率表面前後の複雑な相互作用が、エコーの形状に大きく影響するため歪みが発生します。このような場合は、実際に測定する物質の形状に合わせた基準試験片で測定器を設定し、形状の歪みをゼロオフセットで補正することが重要となります。
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