NDT理論

精密超音波厚さ測定理論及びアプリケーション

by Kenneth A. Fowler, Gerry M. Elfbaum, Karen A. Smith, and Thomas J. Nelligan

測定の原則

超音波非破壊検査(NDT)は、高周波音波を使用して物質の厚さ、完全性など物理的な特性を検査する技法として、品質管理に幅広く利用されています。超音波の技法を採用することにより、試料の両側に接触しなくても精度の高い測定を短時間で行うことができます。用途によっては±1ミクロンまたは±0.0001インチという高精度の測定も可能です。金属、プラスチック、セラミック、複合材、エポキシ樹脂、ガラスをはじめ液体濃度や生体サンプルの厚さなど、多くの工業用材料に超音波による測定が使用されています。オンラインまたは製造過程で押出し成型されたプラスチック製品やロール状金属、多層素材の層やコーティングなどの測定もできます(オンラインまたはインプロセス測定)。最新のポータブル探傷器は、操作が簡単なだけでなく、信頼性も向上しています。


精密超音波厚さ計は通常、500kHz~100MHzの間の周波数で動作し、圧電型トランスデューサ(探触子)が電気パルスによって励起され、音波が連続的に発生します。さまざまな音響特性を持つトランスデューサが数多く開発され、多くの工業用途のニーズに応えています。通常、厚い物質や高い減衰特性、または高い拡散特性を持つ物質では、深部まで正確に測定するために低周波が使用されます。それとは反対に薄い物質や減衰特性、拡散特性がない物質では、分解能を向上させるため、高周波の使用が推奨されています。パルス-エコー超音波厚さ計では、トランスデューサが生成した短い超音波パルスが物質を通過して表面、または内面からトランスデューサに反射するまでの伝播時間を正確に計測し、材料や構造体の厚さを算出します。ほとんどの場合、この伝播時間は数ミリ秒以下です。測定した往復の伝送時間は2で除算され、往路と復路の伝播時間が計算されてから試料内の音速で乗算されます。

D=Vt / 2

ただし、d=物質の厚さ
V=物質中の音速
t=測定した往復の伝播時間

また、実際には電気的および機械的な遅延の固定値を調整するため、測定された伝播時間からゼロオフセットを差し引きます。コンタクトタイプ・トランスデューサを使用した通常の測定では、トランスデューサのウェアプレート(磨耗板)と接触媒質の層を通過する音波の伝播時間および電気的な切換え時間やケーブル遅延を、ゼロオフセットで補正します。このゼロオフセットは測定器の校正手順に組み込まれ、最高レベルの精度と直線性を得るために必要とされています。



図1
図1は、最新のマイクロプロセッサ制御による超音波測定器の一般的なブロック図です。マイクロプロセッサ制御のパルサーによって、単一指向性電圧インパルスが広帯域超音波トランスデューサに伝送されます。トランスデューサで励起された広帯域超音波パルスは、カップリング液媒質を使用することによって試料に伝搬されます。トランスデューサが受信したエコーは電気パルスに変換され、レシーバのAGC(自動ゲイン制御)増幅器に送られます。マイクロプロセッサベースの制御とタイミング論理回路の両方で、パルサーの同期をとり、伝播時間を測定するために適切なエコー信号が選択されます。

指定した測定時間中にエコーが検出されない場合は、電力を節約するため新しい測定サイクルが要求されるまで測定器の電源が切断されます。エコーが検出されるとタイミング回路で指定した測定モードに合わせて伝播時間が正確に計測され、確実な平均値が得られるまで何度もこの手順が繰返されます。その後、マイクロプロセッサでこの伝播時間の測定値とRAMに保存された音速およびゼロオフセットの情報を使用して厚さが算出されます。算出された厚さはLCD(液晶)画面に表示され、選択したレートで更新されます。最新の測定器の多くにデータロガーが搭載されていますので、数千件の測定結果は識別コードとRAMにある設定情報を一緒に保存することができます。保存されたデータは測定器の画面に表示したり、プリンタやコンピューターに読み込んで解析作業を行うことができます。

測定モードとトランスデューサ(探触子)の選択

超音波厚さ測定の手法は、測定に使用するトランスデューサの種類や超音波パルスが試料に伝播する時間の計算に使用するエコーの種類によって分類されます。精密厚さ測定では、測定方法をトランスデューサの種類によって分類し、基本的に次の3つに分類されます。


1. 接触型トランスデューサ
2. 遅延材型トランスデューサ
3. 水浸型トランスデューサ

伝播時間の測定に使用するエコーの種類で分類する場合も同様に、基本的に次の3つに分類されます。

モード1:モード1では、コンタクトタイプ・トランスデューサを使用して、励起パルスから試料の最初の底面エコーまでを測定します。このモードは汎用試験と、通常はモード2またはモード3の条件に該当するもの以外に使用します。

モード2:モード2では、遅延材型または水浸トランスデューサを使用して、試料の表面近くで発生するインターフェースエコーから最初の底面エコーまでを測定します。モード2は、主に曲率の大きい凹面または凸面の半径、あるいは制限されたスペースを遅延材型や水浸トランスデューサで測定する場合に使用されます。移動する物質をオンライン測定する場合は水浸トランスデューサを使用し、高温で測定する場合は高温対応の遅延材タイプ・トランスデューサを使用します。

モード3:モード3では、遅延材型または水浸トランスデューサを使用して、2つの連続した底面エコーの間隔を測定します。このモードは、複数のクリアな底面エコーがある場合にのみ使用します。粒子の細かい金属、ガラス、セラミックなど減衰が比較的少なく、音響インピーダンスの高い物質を対象とするのが一般的です。モード3は、用途によって測定精度と最小厚さ分解能が最も優れていますが、深さは犠牲になります。また、精度や分解能の条件にモード1と2が適合しない場合に使用します。

これらの分類は図2にまとめ、採用した3つのタイミングモードおよびトランスデューサの種類を図解しています。

注意:もうひとつ一般的なトランスデューサとして、デュアルエレメント・トランスデューサがあります。これは、この文書の中心となる精密な測定よりも腐食検査で広く利用されています。その名前が示す通り、デュアルエレメント・トランスデューサは一方が送信用、もう一方が受信用の1組の圧電素子を別々の遅延材に接続して使用します。厚さ測定は、モード1の手法に修正を加えて行います。最初の底面エコーを読み込み、伝播時間から遅延までに相当するゼロオフセットを減算します。デュアルエレメント・トランスデューサは、一般的に頑丈で高温に耐えます。また、孔食をはじめ局部的な脆弱化の検査にも適しています。ただし、V-pathの補正によるゼロオフセット変動やタイミングエラーの可能性があり、精密測定には一般的に推奨されていません。デュアルエレメント・トランスデューサの利用に関する詳細は、当社までお問合せください。

測定
モード1のコンタクトタイプ・トランスデューサを使用した超音波厚さ測定は、最も単純な手法としてさまざまな用途で利用されています。コンタクトタイプの手法では多くの場合、トランスデューサから試料までの超音波の入射効率は最も高くなります。モード1のコンタクトタイプは、プラスチックで約0.12ミリ(0.005インチ)、金属で0.25ミリ(0.0005インチ)を下回らない厚さが必要であり、試料の温度が室温とほぼ同じ状態で、形状的に接触可能な場合に使用されます。遅延材型および水浸トランスデューサを使用するモード2と3は、上記で説明したように用途がモード1の条件に一致しない場合にのみ選択します。


※1:図2の厚さの範囲は、音速が約0.5cm/μ秒または0.23インチ/μ秒の場合で、厚さの最大値は物質内の音の減衰に制限されないことを前提としています。

用途に対応したトランスデューサを厚さ測定の範囲と分解能、試料の音響特性およびその形状に基づいて選択します。適切なトランスデューサを選択するには、必要な測定範囲を示す試験用ゲージを使用して実験を行うのが最も確実です。必要な範囲で妥当な結果が得られたトランスデューサの中で、周波数が最高値で直径が最小値のものが一般的に推奨されます。小径トランスデューサは、試料への入射が簡単であり、同じ接触圧力で最も薄い接触媒質の層に入射できます。また、高周波トランスデューサは、短い立ち上り時間のエコー信号を作ることができるため、厚さ測定の精度が向上します。その一方で、音響特性や試料の表面の状態によって、入射および散乱や減衰による信号の損失を補強するためには、大口径低周波トランスデューサが必要になります。最適なトランスデューサを選択するには、薄い物質の分解能のために深さ(またはその逆)を犠牲にする場合があります。広い範囲を測定するためには、複数のトランスデューサが必要になることもあります。

パフォーマンスと精度に影響する要因

校正:超音波測定の精度には、測定器の適切な校正とその精度が直接反映されます。高品質の超音波測定器は、すべて用途に適した音速やゼロオフセットのための校正手法が用意されています。校正を行い、メーカの指示に従って定期的に確認することは重要です。音速は、常に測定対象物質に合わせて調整します。ゼロオフセットは通常、トランスデューサの種類やトランスデューサケーブル長、測定モードなどが関係します。

試料の表面粗さ:試料の前後の面が滑らかで水平な場合に、最も精度の高い測定値が得られます。接触面が粗いと測定可能な厚さの最小値が増加します。これは、層厚さが増して接触媒質層で音が反射するためです。トランスデューサの接触媒質層で厚さにばらつきがあると、測定が不正確になる可能性があります。また、試料のいずれかの表面が粗いと微妙に異なる複数の反射信号がトランスデューサに感知されるため、試料の表面から反射されるエコーに歪みが生じる場合があります。

入射の手法:モード1(コンタクトタイプ・トランスデューサ)の測定では、接触媒質層の厚さが測定に含まれ、ゼロオフセットで補正します。精度の最大値が得られたら、入射の手法が適していたことになります。そのため、粘度が適度に低い接触媒体をデータの取得に必要な量のみ使用し、トランスデューサに規定量の荷重を加えます。再現可能な読み込みに必要な安定した荷重の加減は、少し練習すれば習得できます。一般的に直径の小さいトランスデューサは、直径の大きいトランスデューサに比べて接触媒質の量が少ないため、入射のときの音圧も小さくなります。

トランスデューサの傾きは、上記で説明したすべてのモードでエコーを歪ませるため、不正確な測定の原因になります。

試料の曲率:関連する問題としては、試料とトランスデューサの位置関係です。曲面を測定する場合、試料の中心線に近い位置にトランスデューサを配置し、可能な限り表面に対して一定した位置を維持します。この配置を維持するには、バネ式のV-blockホルダーを使用する場合があります。一般的に、曲率半径が小さくなるとトランスデューサのサイズも小さくなるため、トランスデューサの位置関係の重要性も増加します。半径が極端に小さい場合は、水浸トランスデューサがより必要となります。オシロスコープなどで波形表示を観察することも、最適な位置を維持する上で役立ちます。波形表示を見ながらオペレータが、トランスデューサの位置を維持する方法を考えることもできます。曲面では、接触媒質をデータの取得に必要な量だけ使用することが重要です。過剰な接触媒質は、トランスデューサと音波を反射する試料の表面の間にフィレットを形成し、正確なデータ取得を阻害するスプリアス(不要波)信号を発生させてしまいます。

テーバー部または偏心:試料の接触面および底面が、互いにテーバー部あるいは偏心している場合は、ビームの幅全体において音の伝播経路が変化するため、反射したエコーが歪んで測定精度が低下します。

試料の音響特性:工業用材料の中には、超音波厚さ測定の精度や範囲を制限する可能性のあるものがあり、次のような条件を備えています。

1. 音の散乱:鋳造ステンレススチール、鋳造鉄、グラスファイバーおよび複合材などの材料では、グラスファイバーや複合材を構成している異なる物質の成型物や境界の個々の粒子から音響エネルギーを散乱します。物質を問わず、空隙には同じ効果があります。測定器の検出感度は、このようなスプリアス散乱エコーを検出しないよう調節する必要があります。このような補正は言い換えれば、物質の底面から戻ってきた有効なエコーを識別する機能を制限することになり、測定範囲を制限することになります。

2.音の減衰または吸収:低密度プラスチックやゴムなど多くの有機材料では、音響エネルギーは、超音波測定で使用される周波数で急速に減衰し、高温になると増加する傾向にあります。このような物質で測定される厚さの最大値は、減衰によって制限されます。

3.速度の変化:超音波厚さ測定は、物質の音速と測定器の校正状態によって精度が変化します。ある地点から別の地点までの音速が、大きく変化する物質もあります。これはある種の鋳物に見られ、異なる冷却率による粒子組織の変化と粒子組織による音速の異方性が原因となって起こります。グラスファイバーは、樹脂とファイバーの割合によって局部的に音速が変化します。多くのプラスチックやゴムでは、音速は温度によって急速に変化し、測定温度では速度の校正が必要になります。

位相反転または位相歪:反射して戻ってくるエコーの位相や極性は、境界の物質の相対的な音響インピーダンス(密度×速度)によって決まります。多くの測定器では、試料が金属、セラミック、プラスチックなどより音響インピーダンスの低い空気、または液体を媒質にした状況が想定されています。ただし、特殊な場合(金属上のガラスライナーやプラスチックライナー、または鋼鉄の銅による被覆加工など)では、このインピーダンスの関係は逆転し、エコーは位相反転します。このような場合、精度を維持するためには、適切なエコー検出極性に変更する必要がありますが、装置によってそれができない場合は、ゼロオフセットを調整してタイミングエラーを波形の半分のサイクルと等しくなるように補正します。

粒子の粗い鋳金や特定の混合材のような異方性材料、不均質材料は、物質の状態によってビームエリアに複数の音響伝播経路を発生させるため、複雑化します。このような場合は、位相歪が起こり、正と負が明確でないエコーが発生します。測定の精度を判断するには、基準試験片を使用した慎重な実験が必要です。エコーの形状に一貫性がある場合は、ゼロオフセットで補正できますが、変化があると高精度の厚さ測定が要求され、不適切かもしれません。

接触媒質

超音波測定では、接触媒質用にさまざまな材料が使用されます。プロピレングリコールは、多くの用途に利用されています。音響エネルギーを最大限に伝達する複雑な用途には、グリセリンがよく使われます。ただし、金属の一部ではグリセリンによって水分が吸収されるため腐食する可能性があり、このような場合は推奨できません。その他、常温での測定に適した接触媒質には、水、油やグリース、ジェル、シリコン溶液などがあります。

表面が滑らかな場合、用途によっては液体の接触媒質の代わりに薄い柔軟な薄膜(薄いポリウレタンなど)をトランスデューサの面、または遅延材と試料の間に使用します。この方法の場合、測定器の設定パラメータの変更が必要になることがあります。また、トランスデューサを試料の表面に強く押し付けなければなりません。上記で説明したように、測定時の温度が高い場合は、高温用の特別仕様の接触媒質が必要になります。

高温での測定

高温での測定(約50°C / 125°F以上)は、特別な注意が必要になることをあらかじめご理解ください。はじめに、標準のコンタクトタイプ・トランスデューサは、この限界以上の高温にさらされると、破損するということを念頭に置き、十分注意してください。トランスデューサに使用されている材料の熱膨張係数が、高温によって変化し、剥離してしまいます。コンタクトタイプ・トランスデューサは、指で触れられないほどの高温の表面には、決して使用してはなりません。

また、高温での測定は、通常モード2またはモード3で遅延材タイプ・トランスデューサ(適切な高温用遅延材を使用)、または水浸トランスデューサを使用して行います。すべての物質の音速は、温度によって変化します。通常は、物質の温度が低下すると音速が上昇し、物質の温度が上昇すると音速は低下します。また、物質の温度が凍結点や溶解点に近づくと急激に変化します。金属やセラミックよりもプラスチックやゴムの方が、変化は大きくなります。音速の変化は、弾性率や密度の変化と関係し、物質と温度の範囲によって、この関係は非直線化(複雑化)します。最大限の精度を確保するため、測定器の音速の設定は、測定時と同じ温度で校正します。高温物質の測定では、測定器を室温に設定すると、音速によって重大なエラーを発生させてしまいます。また、約100°C / 200°Fを超える温度では、高温用の特殊な接触媒質の使用を推奨しています。現在、さまざまな市販製品が入手可能です。

オンライン測定

連続したオンライン超音波厚さ測定は、ほとんどの工業製品に適用でき、一定のプロセス監視に応用されていますが、特に押出し成型プラスチックや金属板、金属管などに適しています。通常、バブラーや噴出装置で生成した水柱、または水槽を使用して音響エネルギーを試料に入射します。測定は、モード2または3で行われますが、特殊な場合はコンタクトタイプ・トランスデューサを使用して、モード1で行われます。オンライン超音波測定の精度を確保するには、物質の温度を安定させることが大切です。これにより、音速の変化によるエラーを防止することができます。入射の一貫性を維持するためには、表面を十分に滑らかにする必要があります。また、トランスデューサと試料の正確な配置を確保するためには、ある種の固定材(治具)を使うことも必要です。

ケーブル長

水中での検査など特殊な用途では、長いケーブルを使ってトランスデューサと超音波測定器を接続する必要があります。これらは腐食測定が主となり、本書の目的からはずれますが、精密測定でも長いケーブルが必要な場合があります。測定に大きく影響するケーブルの長さは、用途によって異なりますが、精度や最小測定範囲などの条件と同様にトランスデューサの周波数によって異なります。20MHzで1メートル / 3フィートを超える長さでは、ケーブル反射が波形に影響を及ぼします。低い周波数では、長いケーブルの場合より特別な配慮をせずに使用できます。ただし、ケーブルの長さが特に3メートルを超える場合は、固有の用途条件と照らし合わせて実験評価をする必要があります。モード1の測定では、ケーブル反射によって励起パルスの波長が伸び、測定可能な厚さの最小値が制限されます。また、ゼロオフセットでケーブルを通過してくる電気パルスの伝搬時間を補正する必要もあります。モード2および3では、ケーブル反射によってインターフェースエコーと底面エコーに歪みが発生し、極端な場合(約30メートル / 100フィート以上のケーブル)は、ケーブル内の電気の伝播時間に等しい間隔で必要な信号の後にスプリアス(不要波)信号が、大量に伝送される場合もあります。

測定モードに関する注意

モード1最初に反射されるエコーの励起パルス

コンタクトタイプ・トランスデューサを使用した超音波厚さ測定は、最もシンプルな手法としてさまざまな用途で利用されています。ほとんどの工業用材料では、コンタクトタイプの手法を使用すると、トランスデューサから試料までの超音波の入射効率が最も高くなります。用途条件に制限がある場合は、コンタクトタイプ・トランスデューサを使用してモード1で測定することが推奨されています。

図3で示すようにコンタクトタイプの測定は、一般的に厚さの最小値が金属で約0.5ミリ(0.020インチ)、プラスチックで0.125ミリ(0.005インチ)を下回らない場合で、かつ精度条件が0.025ミリ(または±0.001インチ)を上回らない場合に適用します。また、前述のように試料温度が約50℃を超える場合は、コンタクトタイプ・トランスデューサは使用できません。高温では、トランスデューサが熱により破損する可能性があるためです。

この測定モードでは、励起パルスから最初のエコーが反射されるまでの時間に、トランスデューサのウェアプレートとカップリング液へのパルス伝播時間、ケーブル遅延および立ち上り時間によるオフセット、または検出されたエコーの周波数成分による多少の増分が含まれます。このような要素を補正するため、測定器にはゼロオフセット機能が装備されています。それによって、測定時間合計からこれら数種類の固定された遅延合計に相当する時間が、減算されます。ゼロオフセットは通常、トランスデューサの周波数を変更すると必ず調整が必要になります。これは、厚さや音速の既存値を使用した基準試験片で行いますが、音速が不明な場合は、2種類の厚さの基準試験片を使用して速度とゼロオフセット値を設定します。

試料の音響特性や試料厚さ、形状など多くの要素を考慮して適切なコンタクトタイプ・トランスデューサを選択します。一般的に周波数が高く直径の小さいトランスデューサは、信頼性と再現性に優れ、測定対象の厚さ範囲で十分なパフォーマンスが得られます。小径トランスデューサは、試料への接触が簡単であり、同じ荷重で最も薄い接触媒質の層に入射できます。また、高周波トランスデューサは、立ち上り時間の短い信号が作れるため、厚さ測定の精度も向上します。その一方で、音響特性や試料の表面状態によっては、適当な入射および散乱や減衰の問題を解決するため、トランスデューサを低周波にする必要があります。

コンタクトタイプで曲面の厚さを測定する場合は、トランスデューサの振動子サイズは曲率半径の減少に合わせて小さくします。また、トランスデューサと試料の表面の間に使用する接触媒質の量も最小限に抑えます。接触媒質を過剰に使用すると、トランスデューサと曲面の間の接触媒質に音響エネルギーが反射するため、ノイズが発生します。

モード2最初の底面エコーに対するインターフェースエコー

励起パルスに続く最初の2つのエコー間の測定は、モード2に分類されるためモード2を使用します。通常、この場合は、遅延材やウォーターパスと試料の外側表面の間にある境界のインターフェースエコーから内側表面の底面エコーまでを測定します。

モード2で測定する場合に必要とされるインターフェースと底面からの2つの有効なエコーについては、考慮すべき条件がいくつかあります。まず、インターフェースエコーが、確実に存在する必要があります。柔らかいプラスチックやシリコンなど、水と同様に音響インピーダンスの低い物質を、水浸型で測定する場合があります。また、遅延材タイプ・トランスデューサで遅延材とほぼ同じインピーダンスを持つ物質(ポリマーなど)を測定する場合もあります。このように水または遅延材と試料のインピーダンスが同じ場合は、インターフェースエコーが減少して振幅が低下するため、検出の信頼性が損なわれる可能性があります。遅延材タイプ・トランスデューサでの測定が困難でも、異なる遅延材を使用することによって修正できる場合がありますが、水浸型の測定で問題がある場合は、水浸型の接触媒質として水ほど効果的な液体は存在しないため、解決は難しくなります。(特殊な例として高温の押出し成型プラスチックとインピーダンスが一致する場合は、冷却管のプラスチックが冷えている地点までトランスデューサを移動すると音響インピーダンスが増加します。)

また、インターフェースエコーと底面エコーの両方の位相、または極性をモニタして装置の検出用極性やゼロオフセットを調整し、反転を補正する必要もあります。最も一般的な例では、プラスチックと金属の両方を試料とした遅延材型での測定が挙げられます。プラスチックの遅延材を金属試料に使用すると、高いインピーダンスから低いインピーダンスの境界ができ、同じ遅延材をポリマー試料に使用すると、相対的音響インピーダンスは、高いインピーダンスから低いインピーダンスの関係になります。インターフェースエコーの極性は、これら2つの状況では反転し、測定器が正しく調整されないと測定でエラーが発生します。これは遅延材タイプ・トランスデューサでの測定で、ゲージを金属の基準ブロックに設定してからプラスチックの測定に使用した場合に発生します。インターフェースエコーと底面エコーの位相は、水浸型で曲面の測定を設定する場合でも、ビームの形状と曲率表面前後の複雑な相互作用が、エコーの形状に大きく影響するため歪みが発生します。このような場合は、実際に測定する物質の形状に合わせた基準試験片で測定器を設定し、形状の歪みをゼロオフセットで補正することが重要となります。

モード3インターフェースに続くエコーからエコーまで

ここで定義するモード3の測定手法では、インターフェースエコーに続く連続した底面エコー間の時間間隔を測定します。このモードは通常、試料の厚さが比較的薄く、最高レベルの精度が求められる場合に使用します。モード3の測定は、音響インピーダンスが1×10gm/cm2秒より大きい工業製品(ほとんどの金属、セラミック、ガラスが含まれる)に適用します。この種の物質では、連続する反射がすべて同じ極性で、連続したエコーの相対的振幅は、物質からポリスチレンまたは水への音響エネルギーの透過係数によって決まります。これら2つの物質は、相対的に音響インピーダンスが低いため、連続したエコー信号の振幅は、通常0.5以上または-6dBです。表IIでは、水とポリスチレンの遅延に対して予測される、連続したエコー間の部分的なエネルギーの損失を表しています。音響インピーダンスの大きく異なる物質をこのモードで試験する場合は、精度を最大限上げるため連続するエコー信号の振幅の差分を補正する必要があります(これはゼロオフセットで行う)。ただし、表IIのように、音響インピーダンスが3×106以下にならない限り、エラーはさほど大きくはなりません。

多くの工業用途では、モード3の測定である水浸型よりも、遅延材タイプ・トランスデューサの方が利便性に優れています。遅延材タイプ・トランスデューサは、周波数と遅延材の長さによって、約0.075ミリ(0.003インチ)から12.5ミリ(0.5インチ)の範囲の測定で使用されます。コンタクトタイプ・トランスデューサによる測定では、遅延材の直径または振動子のサイズは、半径の曲率の減少に合わせて小さくします。約3ミリ(0.125インチ)以下の半径では、水浸トランスデューサの方が入射に優れているため適しています。

表面仕上げが約3ミクロンRMS加工された表面に対して正確な厚さ測定を行う場合、モード3の測定では、遅延材タイプ・トランスデューサを使用すると、モード1のコンタクトタイプ・トランスデューサよりも反復読み込み回数が多くなります。これは、コンタクトタイプ・トランスデューサで測定した時間に追加される接触媒質層の厚さの変数が、連続したエコーの反射によって差し引かれるためです。この一般原則は、塗装した表面にも適用されます。複数のエコーは、金属や他のインピーダンスの高い物質で反射しても塗装面では反射しません。ただし、モード3の測定で使用できる表面の種類は限られているため、極端に粗かったり腐食している場合は、この手法は適用できません。モード3の測定では、クリアな底面エコーは最低2つ必要とされ、条件の悪化によって表面が粗い場合は、信号が損失されて2番目のエコーが消去されます。

水浸トランスデューサをモード3の測定に使用する場合、初期設定中は、オシロスコープでエコーをモニタする必要があります。スプリアスまたは不要な信号が、表示される場合もありますが、電子的な空白がない限り正確な測定を行うことができます。図4は、予測される2つの状態を示しています。


測定した時間間隔

4a 適切な測定


図4aでは、正しいウォーターパスで適切に設定し、焦点を合わせたトランスデューサを使用した厚さ測定を示しています。同じ周波数、同じサイズの水浸トランスデューサでも、焦点を合わせない場合に比べて焦点を合わせた場合は、ビームの角度変更や不整合に対応することができます。また、放射状の試料への入射も改善できます。




測定した時間間隔

4b エラー:単一エコーの連続したローブの測定

図4bでは最初の底面エコーの1番目と2番目のサイクル間の測定でエラーがある場合を示しています。これは、不整合や不適切な焦点によってエコーの形状が明確でない場合に起こります。


測定した時間間隔

4c エラー:モード変換した横波のエコーの測定

図4cは、最初の底面エコーとモード変換された横波間でのエラーを伴う測定を示しています。このエラーは、焦点を合わせた水浸トランスデューサを使用したとき、トランスデューサと試料表面の間のウォーターパスが長すぎたことに起因しています。厚さ測定で複数のクリアなエコーを取得するには、焦点を合わせた水浸トランスデューサの焦点距離を十分に短くして動作する必要があります。焦点か焦点距離の近辺で操作すると、中程度の横波エコーが発生します。(これは、モード3で測定したときにだけ発生する問題です。モード2では最初の底面エコーの後に、問題のあるエコーは発生しません。)半径の小さい対象物では、法線入射以外のビームの構成要素が、局部的な屈折やモード変換を引き起こす場合に同じことが起こります。一般的には、焦点とウォーターパスの組み合わせを変えて実験を行い、用途目的に最もクリアなエコーを複数生成できる組み合わせを決定することが推奨されています。

付録

クラス3の測定手法によるエネルギーとそれに対応するパルスの反射エコー ― 信号の振幅損失
E2/E1 A2/A1 E2/E1 A2/A1 E2/E1 A2/A1
タングステン 10 .89 .94 .97 .98 .94 .97
Mモリブデン 6.4 .83 .91 .95 .97 .97 .95
鋼鉄 4.6 .78 .88 .94 .97 .88 .94
4.3 .76 .87 .93 .96 .86 .93
真鍮(70-30) 3.7 .73 .85 .92 .96 .85 .92
ジルコニウム 3.0 .67 .82 .90 .95 .81 .90
チタニウム 2.7 .64 .80 .86 .93 .74 .86
アルミニウム 1.7 .50 .71 .84 .92 .71 .84
溶解石英 1.5 .46 .68 .82 .91 .67 .82
1.0 .30 .55 .74 .86 .55 .74

NDT関連用語集

精度:厚さの測定値とパラメータの真の値との一致。真の値は、適切な基準試験片を使用して定義されます。

音響インピーダンス:音速と物質の密度によって定義される物質の特性

振幅:波動における物質の粒子の最大の変位。電子工学では信号の大きさを指し、通常は正または負の電圧で示されます。

減衰:音響経路の任意の2点で発生する音響エネルギーの損失

底面エコー:トランスデューサが入射した試験サンプル面の反対側の背面から受信したエコー。このエコーのタイミングは測定時の試験サンプルの厚さと一致します。

遅延材:トランスデューサの前に配置して、励起パルスと試験サンプルの前面からのエコーの間に遅延を発生させる物質(通常はポリマー)

励起パルス:超音波トランスデューサの電圧素子に適用され、音波の発生と振動を起こす短い電気パルス

周波数:機械的には、指定した時間の範囲内(通常1秒間)における振動体による振動サイクル数。電気的には、指定した時間の範囲内で定期的な信号(正弦波)が繰り返されるレート

インターフェースエコー:遅延材型または水浸トランスデューサを使用したときに見られる、試験サンプルの正面から反射されるエコー

位相反転:波の正および負のピークの反転(または代数符号の変化)

分解能:厚さ測定では、大きく異なる厚さの度合いや時間間隔を識別すること

音速:物質内を伝搬する音波の速度

音波:固体、液体または気体など、媒体中の機械的な振動の整合性のあるパターン

トランスデューサ:ある形状のエネルギーを別の形状に変換する装置。超音波測定では通常、電気的エネルギーを機械的エネルギー、またはその逆に変換することを意味します。

波形:振幅対時間によって示される波列におけるエネルギーレベルの画像表示

ゼロオフセット:測定された時間間隔と実際に試験サンプルに音が伝播する時間の差異に相当し、その差異は一般的に切換え遅延、ケーブル遅延およびウェアプレートと接触媒質の厚さが原因で発生します。

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